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「あす旅」体験ブログ "第1回水戸市編"取材:茨城町

水戸藩の歴史に直に触れる提灯づくり体験

はじめまして。茨城町商工観光課の小松です。
記念すべきあす旅体験ブログの第1回目は、私の上司の本多さんにご協力いただき、一緒に水戸市の鈴木茂兵衛商店での提灯づくり体験を取材してきました!

 

 

堅牢・質実剛健な「水府提燈」

お祭りやお盆など伝統行事に欠かせない提灯。日本での歴史は、遠く室町時代へとさかのぼります。
水戸では、江戸時代に下級武士が生活を支えるため提灯づくりに励み、「水府提燈」(※水府=水戸のこと)として水戸藩の奨励産業となりました。竹ひご一本一本を輪にして糸を絡めていく製法を採り、「西の内和紙」という水戸藩の特産品でもあった丈夫な和紙で作られた「水府提燈」は堅牢・質実剛健だと江戸の町でも評判を得たそうです。

 

 

伝統を引き継ぐ『鈴木茂兵衛商店』

最盛期には水戸に30店以上あった提灯専門問屋ですが、生活様式の変化の中で提灯の登場する場が少なくなり、作り手や売る店も減ってしまいました。その中で『鈴木茂兵衛商店』は慶応元年(1865年)の創業以来「水府提燈」の技と魅力を守り、さらに研究工夫を重ねられています。

今回はそんな『鈴木茂兵衛商店』さんで、提灯づくり体験をしてきました。

 

 

いよいよ提灯づくり体験スタート!!

『鈴木茂兵衛商店』は国道118号線沿い、茨城大学の近くにあります。
瓦屋根の趣ある建物のショーウィンドウには伝統的な形や、アーティスティックなデザインの提灯が並んでいました。店舗内はワークショップ後に

拝見することにして、早速体験会場へ。

この日、提灯づくりを教えてくださるのは広報の鈴木鉱太さん。第7代目社長 鈴木隆太郎さんのご子息です。伝統工芸の体験ということで少し緊張していましたが、手取り足取り教えてくださるとのことで安心しました(笑)

 

 

伝統の技はやっぱり難しい!?

 体験はまず、和紙の柄を選ぶことから始まります。伝統的な和柄模様のもの、家紋が大きく描かれたものなど様々あって迷いましたが、私は「組亀甲」という網目が六角形に組まれた模様を、本多さんは「青海波」という水面に見える波頭を幾何学的に反復させた模様を選びました。

次は「型組み」の工程です。“あみだ”という円形の台に“口輪”を巻き付け、“羽根”という提灯の形をつかさどる板を番号順に差し込んでいきます。この羽根に書かれている番号というのが重要で、一つでも順番が狂うと後の作業がうまくいきません。

型が組み上がったら「ヒゴ巻き」をします。羽根に入っている切れ込みに沿ってヒゴを巻いていくのですが、途中で手を放すと反発で外れてしまうので注意が必要です。力加減にもコツがあって引っ張りすぎると提灯の表面がデコボコしてしまうのだとか。やっぱり伝統の技というのは、体験といえども難しいものですね!! 鈴木さんのアシストを受けながら、なんとか骨組みになる部分が完成しました!!

 

 

提灯づくりで最も難しい「ノリ付け」

 「ノリ付け」は職人さんが良い提灯を作る上で、いちばん加減が難しい工程。糊に混ぜる水の量、ヒゴにつける糊の量、刷毛の使い方で、仕上がりや耐久性に差が出るそうです。職人さんでさえ、その日のコンディションで出来が違うものなのだとか。さすがにワークショップでは、糊の塩梅までは難しいので、予め用意していただいたものを使います。

丁寧に糊を付けたら、最初に選んでおいた和紙を巻いていく「和紙貼り」です。和紙に霧吹きで水をかけ、先程巻いたヒゴに“摩り刷毛”で貼っていきます。使い慣れない道具に戸惑いながらも無事に和紙を貼り終えて、体験は終了です。この後、糊を乾燥させて“重化”と呼ばれる提灯の上下につくパーツをつけてもらったら完成なので、乾燥するのを待つ間、店内を案内していただきます。

 

 

「提灯の美しい新しい楽しいを日本から」

店内には伝統的な提灯の技術を現代に活かす「すずも提灯」を中心に展示してありました。まず、入ってすぐの瓶型提灯が目に止まりました。これは、戦後徐々に需要が減ってしまい、提灯の未来が危ぶまれる中、現社長の「提灯に店名を書いたら看板になるのでは」というひらめきから創り出されたものだそうです。和のイメージが強い提灯ですが、英語が書かれたものもあり、なんともおしゃれな雰囲気です。一升瓶やワインボトルの形をしたタイプもあり飲食店に好評だそうです。

中央にはアーティストのミック・イタヤさんデザイン「MICシリーズ」の中から「SWINGシリーズ」が展示されており、三日月や星、雲など可愛らしい形に心奪われます。この「SWINGシリーズ」のすごいところは、可愛さだけでなく、考えつくされた高機能性にあります!! まず、ぶつかっても倒れない起き上がりこぼしの機能。照明として床に置くのにも安心です。そして、手をパンとたたいた音に反応してライトが付いたり消えたりします。スイッチ操作のために毎回しゃがむ身体への負担を考えた心遣いが感じられます。灯りはロウソクの揺らぎを再現したLEDで心安らぐ感じ。また、これは提灯の定義なのだそうですが、どの形のものも、使わない時は畳んで仕舞えるということです。至れり尽くせりな現代の提灯の姿に感心は尽きません!!

店の奥からは、涼し気な音色が聞こえてきます。風にそよいで心地良い音を奏でながら、やさしく明かりを灯す「風鈴提灯 えん」です。ありそうでなかった画期的な品で、これも畳めるので、贈り物や、海外の方へのお土産にもぴったりだと思いました。「提灯の美しい新しい楽しいを日本から」をコンセプトに掲げる鈴木茂兵衛商店ならではの商品です。

また、鈴木さんは、県内外の子どもたちに提灯づくり体験してもらう取り組みもしているとおっしゃっていました。「水戸の小学生全員が提灯を作ったことがある」と言ってくれることが夢だそうです。日本の伝統技術や風情を後世に伝えていきたいという情熱に私も心動かされました。

色々と教えていただいているうちに、糊が乾き、完成品を受け取ると喜びもひとしお!! こんなに素敵な提灯を自分で作ることができて感激です!! 同時に、手作りの大変さを痛感したのも事実!! 職人さん達が長い月日をかけて受け継いできた伝統技術には、目には見えない値段以上の価値があるなぁと感じました!! 鈴木さん、本当にありがとうございました!!


鈴木茂兵衛商店

住所 〒310-0055 水戸市袴塚1-7-5
TEL 029-221-3966
【提灯づくり体験】4~10名(祝日を除く10~4月の金曜日※要予約)


次回は大洗町の関さんが茨城町を取材してくれます!

とっておきのアウトドア体験を用意しているので、ぜひお楽しみに!!